yoga'n'ants / s.t.

Bethlehem,We are on our own

Bethlehem,We are on our own

exシトラスの江森さんが新たに組んだユニット=yoga'n'antsの待望のアルバム。その発売を記念したインストアを観に、渋谷HMVへ。俺含めて10数人??とか思っていたら、結構な人手にビックリ。知り合い密度の高さにもビックリ。勿論、コーネリアスの中の人もいました。

いきなり新ボーカルの披露会となったライブで、お世辞にもこなれた感じとは言いがたい、学祭っぽいドキドキ感溢れる演奏(と言っても、アコギ+ウッドベース+フルートのトリオによる演奏は、相当に聴き応えありました)でしたが、アルバムに収録された数々の名曲を生で聴けた興奮、そして生江森(初です。シトラスのライブの時は、客席にいたらしいので…)に興奮しっぱなしでした。

ライブ終了後は、HMVでCDを購入した、俺(や佐藤さん)のような律儀な人一人一人にコードを付けるという素敵なイベントが開催されまして、何も考えずに並んでいた俺がトップバッター。見事「Emaj7」かなんかをもらいました。

江森さんのユニットが水面下で動いているという事は、tone twilightの日記で時々窺い知ることができたのですが、まさか数年かかるとは。その末に完成したこのアルバムが、まさか悪いはずは無いのだけれども、でもやっぱり「シトラスじゃねえんでしょ」とかすねてみたくなるのが人情ってもの。しかしこのアルバムの発売直前に、シトラスファンとして知られる鈴木十階君が、本当に純粋な、心から純粋な子供のような声で、「楽しみ!(にエクスクラメーションマークもう一個ぐらいささやかに付け足して)」と言ってのけたのですが、そんな彼のあまりのピュアネスに触れて、「あーこの時点で俺失格」とか思うのでした。こういうことって良くある。

ということで、あんまり本作に関して語れない、資格レスな私です。そんな立ち居地でのアルバムレビュー。かいつまんで結論だけ言うと、「ド傑作だから、音楽好きな人は急いで買ったほうが良い。本当に良いものって、あんまり作られないから、それが手に入るうちに買ったほうが良いと思う。」

tone twilightから発表されている各種7inchや、シトラス時代〜それ以降の他アーティストへの提供曲からも伺えるような、ダンス寄りの音圧強め(と乱暴に言ってしまうより不思議な感覚があるんですが、そん)な楽曲を想像するよりも、もっと視座が開けていて、言わば様々のジャンルをダイダラボッチ的に横断した楽曲が、ギリッギリのセンスで並べられた凄まじくトータルバランスの取れたアルバムなのですが、そう言ってしまうと一気に枯木のごとく埋もれていってしまう現実。いや、ここには何かあるんです。

ふんだんに注ぎ込まれたミュージシャンシップに裏打ちされ、くっきり浮き上がった江森さんの歌心が判り易く具体化したような、そんな音楽の幸福な結晶に陶酔することも心安いのですが、それもまたちょっと違う。

僕が言いたいのは、満漢全席のようなアルバムの事ではないし、まして「ここにお化けがいるゾー!」の類のビックラかしレコード紹介でもなくて、驚くべき「技術/構造/手法/アイディア」が、日常に溶け込んでしまうようなベッドルームミュージックと呼びたい心地よくパーソナルな音楽として成立してしまったという、何とも心憎い職人仕事が聴けるぞ!ということなのです。あ、書けた。

これはシトラスとは違う音楽ですが、あのシトラスと同様の強度を持ったセンスが注ぎ込まれたアルバムなのであると、理解していただければ、多分僕はそれも言いたかったんだと思います。

ジャンルで言えば、カンタベリ的なアウトロック〜ジャズの要素が最も強いと感じられると思いますが、コラージュ〜エディットミュージックとしての側面(信じられない程緻密な音響構築が為されています。ハードル上がった)、アシッドフォークとの共鳴(USの地下流通盤というよりも、もう少しヨーロッパ寄りの。もしくはJudee Sillとか、Vashti Bunyanといった女性SSWもの)や、ワールドミュージックの影響も感じさせる、実に色んな角度からの楽しみ方が出来るアルバムです。

と、御託を並べましたが、実はその辺り、myspaceで視聴すれば一発ですよん。すげー無責任な終わり方をしてみます。でも音楽を説明するには、僕は言葉足らずだった。

http://www.myspace.com/yoganants