M-1グランプリ2007、終了

大掃除を終えて、ドミノピザを食べながら(今思えばなんという符合!)、M-1観戦。これ以降はネタバレになるので、「ビデオに録画して後で楽しむ派」の方は、即座にこのページを閉じた後、中東情勢における「後で楽しむ派」の責任に関して考えて欲しいと思っております。

「新味がねえ」なんつって、笑い飯の悲願達成に目を向けてお茶を濁した俺(いや、本気ですけど)なんかからすると、今回の結果は期待を裏切られながらも、それを上回る笑いと興奮を覚えた記念すべき回になりました。サンドウィッチマンの優勝。僕のこの高揚した気分的には「圧勝」と言える結果でしたが、他のコンビも素晴らしいネタで十分互角かそれ以上に、好みによっては未だに「トータルテンボスの方が良かった」と感じている方もいるんじゃないですかねー。それぐらい、よく出来たネタを最高のコンディションでぶつけてきたトータルテンボスでしたが、敗者復活戦から意気揚々とスタジオ入りし、爆笑をさらったサンドウィッチマンを前に、少しだけ気圧されてしまったような感じがしたのが差だったのか。それぐらいの微妙な勝負だったと思います。(余談ですが、だから審査って難しいし、人の好みを前に矢面に立つ嫌な役回りなんだから、あんまり責めないで、サンドウィッチマンを落とした予選・準決勝の審査員を)

笑い飯

噂の「ロボット」ネタ。2005年「マリリン・モンロー」の変形で、お得意の小学生イズムが爆発しており、「男前の口のマシーン」「いややはりやりましょう」キラーフレーズもふんだんに盛り込まれた、贔屓目抜きに一回戦には勿体無いぐらい完成度の高いネタだったと思います。M-1決勝の審査に関しては前々から指摘されている事ですが、あまりに一組目が不利な仕組み(審査方法)だと思うので、ここは本気で再考して欲しいところです。島田紳助は一組目の点数を「基準点」と言い切りますが、基準点とは「笑い飯の出来が9組の中間に位置する」という意味ではないはず。暗黙の内に、「基準点は真ん中」とも見えるやり方で点数をつけていくような曖昧さが、一組目のコンビに不利に働いているような気がします。いや、責めるのはあんまりかと思いますが、いつまでも曖昧に事を進めるこのシステムはやっぱり良くないと思う。結果、紳助や上沼さんの評点は、テレビ的・扇動的に見えました。
あと、サンドウィッチマンにも言える事ですが、どんな些細なコメントでも笑いを果敢に取りにいって、確実にモノにする気概っていうのが見ていて楽しいですね。暫定三位の座から落ちた際の「お茶の間が怒りますよ」からのコンボは神がかってましたね。打ち合わせしてたのか、ってぐらい。

ポイズンガールバンド

予選を文句無く勝ち登ってきて、この出来か…と思わざるを得ない間延びしたネタでしたが、ここはそれが特性のような気もします。しかし元々吉田さんの発想力に支えられ、スランプを迎えながらも、少しずつスタイルを調整したことに加え、阿部さんが演技力(明らかに顔・表情が面白くなってるでしょ)をつけることで乗り越えてきた彼らが、今後本気で優勝を狙うならばもう一皮剥ける必要があるのかもしれません。今日のネタも、予選で披露していた様子をYouTubeでチェックしていましたが、それよりははっきり間延びしていた。

ザブングル

結果的に、「動き+顔+声量で無骨に押しまくるスタイル」以上のものはあまり感じられずに、ちょっと残念な出来。一緒に観ていた彼女が、「彼らの暴力は単に暴力的で、優しさが無い」みたいな言い方をしていたのですが、これは慧眼。優しさ転じて、要するにコミカルさが足りなかったのでしょう。後に出てきたキングコングと比べても、動きのキレ、コミカルさに差を感じました。

千鳥

いつもの大悟とノブが観られて、よかったです。オール巨人師匠の言うとおり、ラストで大きな仕掛けが本当にあったら、素晴らしい漫才になったと思うので、あの大雑把さが実は結構悔しいんですけど、でも…まあ…いつも通りでよかったです。

トータルテンボス

一回戦二回戦両方とも、素晴らしい出来のネタでした。10年目にふさわしい入魂の漫才だったのですが、「上手くて小奇麗」な部分が、勢いを削いでいた気もします(それでも大分、無骨に進行したとは思うんですけどねー。それでもやっぱりちょっと小奇麗)。あと、間合い的に結構雑な瞬間もあって、特に一回戦のホテルのネタなんかは、ツッコミのフレージング(勿論、これは彼らの最大の武器だと思います)が、全体のリズムを崩した箇所も見受けられました。一回戦目より二回戦目の方が出来の良いネタを持ってきたのは、唯一彼らだったと思うけれども、先にも書いたとおり最後勢いの部分で微妙に差が付いたのかもしれません。ただ、今回の出来の良さ、彼らの面白さは十分伝わったと思うので、優勝と同等のものを獲得したのではないかと思ってるんですけどね。「施工主のバカ」「背中がなくなってしまう」は最高。

キングコング

予想通り、滅茶苦茶上手い漫才。一回戦も二回戦も変わらず上手かったけれども、一回戦のネタの良さ・緻密さに比べて、二回戦のネタはただドタバタしているだけに見えてしまいました。例えば僕はキングコングのネタが相変わらずあまり好みではないんですが、それでも思わず笑ってしまうだけの技量を感じました。今回のサンドウィッチマンを「面白くない」と断じる度量の狭さを「好みの違い」と受け取る事は可能ですが、キングコングを「上手くない」というのは100m10秒で走る人を「11秒しか出ていない」と断じるようなもので、そんな言説はあまり額面どおりに受け取れないな。

ハリセンボン

やはりツッコミに独自の味があって(あんな間延びした「天狗見たの。ってなっちゃうよ。」みたいなフレージングで破綻しないのは凄い)面白い。ボケもノーガードでシャープなジャブを打ってくるような、つかみどころのない攻撃力を持っていると思うのですが、漫才としては致命的に散漫なネタだったと思います。最終的に、フレージングとキャラクターで笑いを取って、テレビ芸人的には安泰かと思いますが、ここで笑い飯以上の点が出た事に関しては、審査員の皆さんの各々の評価が狂っているというのではなくて、前提のシステムの曖昧さに問題があるのだと思っています。

ダイアン

「公開処刑」になるかと思いきや、「トウモロコシ」「ジャケットが似合う」や「壊れたハンガー」等、キラーフレーズも頻出の後、結果的にはその存在感を十分にアピール出来たのではないかと思います。M-1後に何かが大きく変わるようなことはないにしても、「M-1で滑ったコンビ」とかありもしないレッテルを貼られることもなく、無名の存在を脱したのではないかと思いますが、今書きながら、「あれ?ダイアンってそんなに無名だった?」とか。煽りVにまんまと乗せられてしまいましたが、無名じゃないよね。元々、そんなに好きなコンビじゃなかったのですが、ポテンシャルは感じました。ネタ自体は、一つ一つのボケにパワーはあったものの、ボケの羅列に陥ってしまったかなというのが、率直な感想です。

サンドウィッチマン

勝ってもテレビ的な得は何もないだろうに、それでも敗者復活から勝ち上がって、優勝してしまうというミラクルに、「今回いよいよ出来レースっぽかったら、来年以降のM-1へのボルテージ、落ちるなあ」とか事前の危惧を払拭し、やはり最高に面白いイベントだなと実感しましたよ、M-1。僕の母親は、なすなかにしとサンドウィッチマンを何年か前から凄く推していたので、意識の片隅にはあったのですが、数年前に見たネタとか面白いけどあまり好きなタイプではなかったのであまりチェックしていなかったのでした。ただ、ここ一二年でやってるネタで、ツッコミの圧倒的な上手さとボケのポテンシャルは感じていたので、敗者復活を勝ち上がった時点で個人的には停滞感を感じる展開(1位キングコング、2位トータルテンボス、3位ハリセンボン)に風を吹かせてくれるかなと、密かな期待をかけていたその密やかなものが、完全に突風として吹き抜けた瞬間に身震いしました。
一回戦は(それこそ、笑い飯の奈良、ブラマヨのボーリング、チュートリアルの冷蔵庫レベル)完璧として、二回戦なんてファーストフードでもやれば良いところを、ピザの宅配で締める辺りにも底知れぬものを感じて、興奮。奇跡の逆転劇を目にして、ちょっと目頭が熱くなった。本当におめでとうございます!

後日、敗者復活も見て、来年へ向けてのエントリも書きますが、今のところ特筆すべきコンビが見当たらない。髭男爵は去年以上に良かったですよ。樋口君もちょっとずつ存在感を増してきたし…というようなことを書きます。